要望書 荒川区長殿へ要望書提出いたしました (荒川区議会議長殿宛ても同文です。)
平成23年10月25日
荒川区長 西川太一郎様
日暮里富士見坂を守る会 代表/金子 誠
荒川区西日暮里3-2-5
風景遺産「日暮里富士見坂からの富士山眺望」の保全と継承を要望いたします。
拝啓 災害の多い本年は例年に増し、区政へのご尽力に感謝しております。また、本年度から荒川区が「景観行政団体」となり、ますます景観に配慮した町づくりを進めていただけること、とても誇りに思っております。
すでにお聞き及びと思いますが、新宿区新大久保3丁目の「(仮称)大久保三丁目西地区開発計画」が、荒川区西日暮里三丁目の日暮里富士見坂からの眺望を大きく阻害することが明らかになりました。
ご存知のように、日暮里富士見坂は都心で唯一、地面に立ったまま富士山を望むことのできる「富士見坂」です。数々の開発による眺望の危機を乗り越え、現在も富士山の頂き、そして右側稜線が美しく望め、近年は遠方から眺望を楽しみに訪れる方も増えております。
このたび明らかになった「(仮称)大久保三丁目西地区開発計画」は、日暮里富士見坂からの眺望ラインのちょうど真ん中に、高さ160メートルという高層ビルが立ちはだかる形となります(富士見坂眺望研究会のシュミレーションを参照)。調査予測によれば、眺望を阻害するのは上部のおよそ40メートルであり、建設予定地は富士見坂からおよそ6キロメートル離れた場所であるため、高層とはいえ120メートルまでならば、現在の眺望が保全されることもわかりました。
すでに建築主の住友不動産株式会社は各種アセスメントを終了していますが、離れた場所であったために、日暮里富士見坂からの眺望への阻害に気づかず、私たち日暮里富士見坂を守る会も、その再開発計画を知らずにおりました。
しかし、この日暮里富士見坂からの眺望は、地域で永年にわたり歴史的に共有してきた風景遺産であり、荒川区を越え広く市民の文化として定着しているものです。
昨今、岩手、岡山、京都、東京など多くの自治体で、さまざまな眺望地点からの景観誘導を進める町づくりが行われています。日暮里富士見坂からの眺望につきましても、こうした事例を参照しつつ、住民や関係機関においてこれまで幾度となく話し合いが行われており、この風景遺産を次代に継承しようという合意が着実に広まってきております。
気づかなかったとはいえ、眺望という万人が享受すべき景観を、個人や企業が私的に専有し遮ってしまうこと、そしてそれを都市計画的諸制度が徒に看過している現状は、見過ごすことができません。
景観遺産を阻害することに事業者が気づいた今、多くの市民共有の景観遺産を次の世代に伝えるため、計画を見直し、修正されるよう、荒川区として、事業者に強く働きかけてくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
10年以上活動を続けてきた日暮里富士見坂を守る会は下記の件について要望いたします。
1 (仮称)大久保三丁目西地区開発計画に対し、日暮里富士見坂からの眺望を阻害しない計画への変更を、住友不動産株式会社にたいして要請・要望してください。
2 今後、日暮里富士見坂からの眺望を保全・継承するために、一日も早く東京都や近隣区と協力体制をとり、制度面での整備に着手してください。
<日暮里富士見坂から見た眺望のシミュレーション画像>
*荒川区資料により富士見坂眺望研究会が作成
(シミュレーション画像のため誤差があります。オレンジ線が建物、実線部分が見えてくる可能背のある部分)。
*高さ:160m 工期(予定):平成22年10月末〜25年夏頃 場所:新宿区大久保3丁目 用途:業務および共同住宅等